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鉄道トラブル:気動車ドア開くトラブル度々 JR、原因究明に16年 <毎日新聞 2010/12/06>を添削

◇昨年九州の事故で、構造的欠陥と判明

 広島市で2010/10、時速約70kmで走っていたJR西日本の旧国鉄製気動車(2両)のドアが突然開き、急停車するトラブルがあった。乗客130人に怪我はなかったが、実は、同種車両でドアが開くトラブルはJR各社で少なくとも16年前から計11件発生。運輸安全委員会は広島のトラブルがあった当日、JR九州で2009年に起きたトラブルをきっかけにした調査結果を公表したが、乗客転落の恐れもあるのに、国やJRはなぜ16年間も原因を解明できなかったのか。

 運輸安全委は報告書で、ドア開閉装置の構造的欠陥を主因と断定。ねじに金属疲労しやすい材料が21年間も誤使用されていたことも指摘した。同じ装置を使用する車両はJR 5社が499両所有。中国・四国・九州のローカル線を主に、東北や千葉・岐阜の一部路線でも運用され、各社は対応を検討している。

 広島のトラブルは2010/10/29 23時すぎ、芸備線 矢賀~戸坂で発生。ドアが閉まっていないことを示す表示に運
転士が気付き、急停車して確認したところ、1両目前部左側のドアが2cmほど開いていた。列車の揺れで全開になってもおかしくない状態だった。

 JR各社によると、同種車両のトラブルは確認できただけで1994年以来11件あったが、運輸安全委など国による調査は、長崎県のJR大村線で2009/12に起きたトラブルまで実施されなかった。走行中に見つかった大村線や芸備線と異なり、停車中に見つかったため重大インシデントに分類されず、調査対象とならなかったのだ。

 運輸安全委が大村線の車両を調べたところ、ドアに乗客のかばんなど物がはさまるような使用を続けた場合、ねじ(接手ねじ)の金属疲労が想定より進む構造的欠陥が見つかった。また、民営化後の1989年以降、部品メーカーが交換用ねじの材料を、無断で指定外の金属疲労しやすいものに替えていたことも判明。メーカーは「市場になかったので代替品に切り替えたが、強度に問題はないと考えていた」と釈明するが、JR各社は寝耳に水だった。

 一方で、トラブルを経験したJR各社間の情報交換は限定的だった。ねじを太くするなど対症療法的な対策にとどまり、抜本的な原因調査などは行われなかった。運輸安全委は報告書で、鉄道各社やメーカーがトラブル情報を共有し、再発防止を図る自発的な取り組みの必要性を訴えた。

 あるJR幹部は「旧国鉄時代なら全国的な連携があったので、もっと早く情報を共有できたかもしれない。会社の枠を超え、幅広く問題を集め、少しでも早く再発防止に努めたい」と話している。

~~~~
<運輸安全委員会の事故調査報告書より抜粋>

 本件戸閉め機械と同形の戸閉め機械についての情報は、以下のとおりである。
 形式 TK106A
 製造初年 1966(昭41)年
 使用車両 キハ45形、キハ66・67形、キハ47形
 メーカー A社(……ggrと、東洋電機製造)

 なお、JR九州には、2009/12現在、キハ66・67形は30両、キハ47形は106両が在籍している。

 接手ねじの材料は、旧国鉄車両設計事務所の図面によるとSS400と定められているが、本重大インシデント発生後、A社が調べたところ、1989(平元)年以降に製造されたピストン棒の接手ねじは、後述する硫黄快削鋼のSUM23に相当する材料が用いられていることが分かった。
 このことについて、A社より以下のような情報が得られた。
 (1)TK106A形戸閉め機械は、1966(昭41)年より製造を開始し、旧国鉄の気動車用の戸閉め機械として納入してきた。
 (2)接手ねじの製造は、1989(平元)年より請負業者であるC社に委託し、A社の工場においてピストン棒の組立てを行っている。
 (3)硫黄快削鋼の使用についてC社は、1989(平元)年当時、SS400の磨き丸棒が鉄鋼材料の市場に存在しなかったことから、強度上遜色のない材料の中で加工が容易であるため使用したと回答している。
 (4)A社としては、戸閉め機械の使用環境において、接手ねじにまげが作用する状況はないものと思っていた。本重大インシデント発生後、戸吊り金具のピン取付穴の形状など、戸閉め機械の使用環境が初めて分かった。

戸閉め機械の設計経緯と接手ねじの破断に関する経過
 TK106A形戸閉め機械の使用の経過と接手ねじの破断に至る経過について、内容を要約すると概略以下のとおりである。

1966(昭41)年
 TK106A形戸閉め機械の製造開始。
1975(昭50)年03月
 本件車両の新製。
1987(昭62)年04月
 旧国鉄の分割民営化により本件車両はJR九州に承継される。
1989(平元)年
 A社は、接手ねじの製造をC社に委託した。このときから材料がSS400から硫黄快削鋼SUM23に切り替えられた。
1998(平10)年
 JR西日本において、接手ねじが破断する事象が発生した。
1998(平10年)09月
 JR西日本とA社が検討した結果、改良形の接手ねじに形状を変更した。(A社の図面を改訂)
2004(平16)年
 JR九州において、接手ねじが破断する事象が2件発生した。
2004(平16)年07月
 JR九州は、本件車両を含む170両の車両について、改良形の接手ねじが取り付けられているピストン棒にすべて取り替えることとした。
2007(平19)年11月
 本件ドアにおいてドアが閉まらない事象が発生し、本件戸閉め機械が取り付けられた。(改良形の接手ねじ(新品))
2009(平21)12月
 本件ドアR側の接手ねじが破断した。(本重大インシデント発生)
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