阪急電鉄株式会社甲陽線甲陽園駅構内列車脱線事故
航空・鉄道事故調査委員会 鉄道事故調査報告書 2009/08/28
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/RA09-7-1.pdf
を抜粋添削
1.1 鉄道事故の概要
阪急電鉄甲陽線夙川駅発甲陽園駅行き3両編成の下り普通第11059列車は、2008/09/20(土)、ワンマン運転で苦楽園口駅を定刻(11:50)に出発した。列車の運転士は、甲陽園13分岐器を速度約17㎞/hで進入した後、分岐線側である甲陽園駅1号線ホームに速度15㎞/h以下で進入したところ、車両に強い揺れを感じたため、常用ブレーキを使用して所定の列車停止位置より約30m手前に列車を停止させた。
列車は、3両目の前台車全2軸が右へ脱線していた。
列車には、乗客約20名及び運転士1名が乗車していたが、死傷者はなかった。
4 原 因
本事故は、本件分岐器始端付近において、本件列車の脱線係数が増加するとともに、限界脱線係数が低下したため、本件列車「2両目の後台車第1軸」「3両目の前台車第1軸」の外軌側車輪である右車輪が右トングレールに乗り上がり、内軌側車輪である左車輪が左トングレールと左基本レールの間に脱線したものと考えられる。このうち、「2両目の後台車第1軸」は、脱線した後、トングレール終端付近で復線したものと考えられる。
本件分岐器始端付近において、脱線係数が増加するとともに、限界脱線係数が低下したことについては、以下のことによる可能性があると考えられる。
(1)脱線係数が増加したことについては、
①急曲線のため大きな横圧が発生する箇所において、曲線半径をより小さくする側の通り変位や継ぎ目折れ等が存在したため、横圧が増加したこと、
②カント超過に加えて、カントの逓減区間の位置がずれていたことにより分岐器内で平面性変位が生じ、輪重が減少したこと。
(2)限界脱線係数が低下したことについては、
①通り変位や継ぎ目折れなどによりアタック角が増加したこと、
②交換して間もない車輪で、フランジ部が粗かったことなどから、フランジとレール間の摩擦係数が増加していた可能性があること。
なお、(1)については、急曲線における阪急電鉄の軌道管理の方法が関与したものと考えられる。
また、本件列車の2両目と3両目が脱線したことについては、本件分岐器への進入速度が1両目と比較して2両目、3両目の方が遅く、より大きなカント超過の状態となったことが関与した可能性があると考えられる。
5 参考事項
阪急電鉄が本事故後に講じた主な対策は以下のとおりである。
(1)本件分岐器付近の軌道整備を行い、軌間変位、水準変位、通り変位等の整正を行った。
(2)本件分岐器のポイント部を基準線側に鎖錠し、分岐線側を使用停止とした。
(3)阪急電鉄の類似箇所における同種事故の対策
①内方分岐器手前でカントを逓減している箇所について、カントが一定となるよう改良した。
②車輪・レール間の摩擦力を低減するため、内方分岐器手前に摩擦調整材塗布器を設置した。
③内方分岐器のポイント部とリード部に脱線防止ガードを設置した。
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