3ドア車&4ドア車に対応、新型転落防止柵開発 JR西日本など <asahi.com 2011/01/07>を添削
1両にドアが3つの新快速と、4つの普通電車。どちらにも対応できるホームでの転落防止柵を、JR西日本とその子会社が開発した。乗客の転落や列車との接触事故が増える一方、車両の種類によってドアの位置が違うことがネックとなり、JR西日本エリアでは柵設置は広がっていなかった。ただ実用化にはシステムや費用面で課題が多い。ホームでの安全確保へ、新たな一歩となるか。
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JR西日本と、子会社のJR西日本テクシア(尼崎市)が開発した新型の可動式ホーム柵。1車両分の長さ(約20m)に5つの開閉部を設け、ホームに入線した電車のドアの数によって開く部分が切り替わる。3ドア車が停車すれば、4ドア車の停車時には使われない中央の扉が開き、その時に開いていない別の扉の裏に収納される仕組みだ。
JR神戸線、JR京都線、阪和線など京阪神エリアの主な路線で、3ドア車は約1400両、4ドア車は約1300両。3ドア車は新快速や快速、4ドア車は各駅停車の普通電車を中心に使われている。3ドア車は2席ずつ縦に並び、4人が向き合うこともできるクロスシート、4ドア車は横向きの長い座席ロングシートで、座席配置に合わせてドアが設けられている。
これらの車両が入り交じるため、JR西日本では電車のドアと連動して開閉する可動式の転落防止柵の設置は進んでいなかった。JR神戸線の舞子駅(神戸市垂水区)で2010/12中旬、ホームから電車の連結部分に転落した女性が、気づかずに発車した電車にひかれるなど、柵があれば防げたとみられる事故も後を絶たない。
JR西日本テクシア技術本部長の佐藤信は「ホームの安全対策は待ったなしだ。さらに軽くて強度が強く、維持管理もしやすい装置への改良を続けたい」と話す。ただ多くの駅で設置するには、新たなシステムの導入を含めた予算面でのハードルは高い。
まず、車両と柵のドアの位置をそろえて停車させるため、ブレーキを自動制御する定位置停止装置の整備が必要だ(※1)。仮に京阪神エリアの特に乗降客の多い約50駅で導入すると、ホームの補強などを含めて1000億円程度かかる見込みだという。車両を3ドアか4ドアのどちらかに統一するには少なくとも2000億円かかるといい、可動柵を整備した方が割安とみられる。だが今回開発された可動柵が駅に設置される具体的な予定は、まだない。
#管理人注 ※1 それは必須ではない。
また、天王寺駅、三ノ宮駅、姫路駅、米原駅などでは、2ドア車の特急と、快速や普通電車が停車するホームが重なっている。そこではこの可動柵を設置する以外にも、何らかの新たな対策が必要となる。
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同じ構造の車両がそろう地下鉄では、可動柵の整備が進む。
大阪市交通局は2006年に開業した地下鉄今里筋線の全11駅に可動柵を設けた。大阪市営地下鉄のホームでの転落や接触事故が2009年度は54件起きているが、今里筋線では開業以来ゼロだ。大阪市交通局は「効果は大きい」として、千日前線や御堂筋線への設置計画も進めている。京都市営地下鉄、神戸新交通、東京メトロなどでも設置が進む。
東京のJR山手線も、車両の構造をそろえることで通常の可動柵で対応する方向だ。JR東日本は2017年度をめどに山手線の全29駅に可動柵を整備する予定で、総工費は約500億円を見込む。またJR東日本によると、車両ドアの開閉に可動柵の開閉時間が加わると、乗降時間が1駅あたり約5秒増えるため、ダイヤを見直す可能性もあるという。
ただ、全国の鉄道や地下鉄約9500駅のうち、可動柵を設置しているのは、2010/03時点で全体の5%に満たない449駅にとどまる。
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国土交通省によると、線路の高架化など踏切の安全対策が進み、鉄道での人身事故は1989年度の1479件が、2009年度には851件と、約4割減った。一方、ホームでの転落・接触事故は2009年度に193件あり194人が死傷。2002年度の113件の約1.7倍に増えている。国土交通省鉄道局安全監理官室の担当者は「酔った客がホームで事故に巻き込まれる例が目立つことは確かだ」と話す。
JR舞子駅での事故以外にも、接触・転落事故は相次いでいる。近鉄大阪線の真菅駅(奈良県橿原市)では2010/07、ホームで友人と遊んでいた小学6年の男児がホームに入ってきた準急電車と接触し、左手首を骨折した。阪急宝塚線の三国駅(大阪市淀川区)では2008/12、全盲の男性が発車直後の電車に接触し、一時重体に陥った。こうした事故を受け、国交省は鉄道会社に可動柵の設置を呼びかけている。
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