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天竜浜名湖鉄道:自立維持か行政依存か <静岡新聞 2011/09/24 08:50>を編集

 天竜川で発生した川下り船転覆事故を受け、静岡県から常勤取締役を受け入れる天竜浜名湖鉄道。3代続いた静岡県OBに代わり民間からトップを迎え、赤字脱却へ経営再建を進めてきたが、再び行政の力を頼る事態になった。民間発想による自立的経営を維持するのか、行政依存への回帰か。事故で表面化した危機管理体制の不備について、出資する静岡県や沿線7市町の責任論もくすぶる中、第3セクターの経営の在り方をめぐる議論の着地点は見えない。

 2011/09/19の臨時取締役会で新しい常勤取締役に内定したのは、天竜浜名湖鉄道を所管する静岡県交通政策課課長の鈴木茂樹(51)。遺族への補償対応や原因究明の調査に追われる社長の名倉健三を補佐し、社内の安全対策強化などの重責を担う。

■収支改善
 2009年に社長に就任した名倉は遠州鉄道出身。天竜浜名湖鉄道の社長に就く前は系列ホテルの代表取締役社長を務めていた。
 「鉄道はサービス業」を唱え、経費削減やイベント列車企画など、民間ならではの視点で経営改革に当たり、2010/03期決算の当期純利益は9期ぶりに534万円の黒字となった。

 地元は事故と静岡県からの派遣を複雑な気持ちで受け止める。天竜区選出の浜松市議の一人は「静岡県のOBが社長だった時代から安全管理は甘かった。今の経営陣だけの責任ではないはず」と主張。「民間活力で再生してきたのに、親方日の丸に戻るのはいかがなものか。果たしてうまくいくのか」と話す。

■緊急措置
 「あくまでも緊急的な措置だ」
 静岡県文化・観光部部長の出野勉は、鈴木の常勤取締役派遣について、最大出資者としての立場や他の自治体の要望を考慮した上での決定と強調する。このため、任期は2011/04からの新経営体制移行がめどとなる。
 ただ、新体制の在り方そのものをめぐっては、「これまでお任せだった反省はある。補助金の支出や地域の足を守る観点で行政が経営に関わり、支えることが必要」(静岡県幹部)、「天竜浜名湖鉄道全体の事業と川下りは分けて考えなければいけない。浜松市がどう経営に携わっていくかは分からない」(浜松市幹部)など自治体間で温度差もあり、最終結論まで時間がかかりそうだ。

■底流にある課題
 静岡文化芸術大学教授(社会・地域デザイン)の黒田宏治は「天竜浜名湖鉄道に限らず、国鉄時代の不採算路線を引き継いだ第3セクターはそもそも経営的に難しい事業。事故を踏まえた対策は欠かせないが、底流にある課題をいま一度見つめ直すべき」と指摘。「民と官のどちらがやるかではなく、むしろ役割分担をしっかり考えることが重要だ」と訴える。

◇天竜浜名湖鉄道の歴代社長◇
 1986/08~1997/06 榛村純一(当時の掛川市長)
 1997/06~2002/03 中山祐次(静岡県OB)
 2002/04~2002/06 中谷良作(当時の天竜市長)
 2002/06~2005/03 杉山直哉(静岡県OB)
 2005/04~2005/06 中谷良作(当時の天竜市長)
 2005/06~2009/05 井口健二朗(静岡県OB)
 2009/06~現在 名倉健三(遠州鉄道)
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