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静岡・JAL機ニアミス:管制官2人、有罪確定へ 「誤指示と因果関係」 <毎日新聞 2010/10/29>を添削

 2001年に静岡県上空でJAL機同士が異常接近(ニアミス)し乗客57人が負傷した事故で、誤った指示を出したとして業務上過失傷害罪に問われた国土交通省東京航空交通管制部の管制官2人に対し、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は2010/10/26付で、上告を棄却する決定を出した。
 一審の無罪判決を破棄し、籾井康子(41)を禁固1年6月執行猶予3年、蜂谷秀樹(36)を禁固1年執行猶予3年とした二審判決が確定する。確定すれば2人は失職する。

 ニアミス事故で管制官の刑事責任が問われたのは初めてで、最高裁の判断が注目されていた。決定は5人の裁判官のうち4人の多数意見。裁判官の桜井龍子は「管制官の指示と事故に因果関係は認められない」とする反対意見を述べた。
(後略)
~~~~

日航機ニアミスの最高裁決定要旨 <共同通信 2010/10/28>を添削

 日航機ニアミス事故で、最高裁の決定要旨は次の通り。

【過失の有無】

 異常接近警報が出て上昇中のJAL907便と巡航中のJAL958便の間隔が欠如し接触、衝突するなどの恐れが生じたこと、JAL958便に降下指示を直ちに行うことが最も適切な指示だったことを考え合わせると、被告人蜂谷秀樹がJAL958便をJAL907便と便名を言い間違えた指示を出したことが、航空管制官としての職務上の義務に違反する不適切な行為だったことは明らかだ。

 蜂谷が言い間違いでJAL907便に降下指示を出したことは、JAL958便も航空機衝突防止装置(TCAS)の降下指示に従って降下し、両機が接触、衝突するなどの事態を引き起こす高度の危険性を有していたというべきで、業務上過失傷害罪の観点からも結果発生の危険性を有する行為として過失行為に当たる。蜂谷の指導監督者だった被告人籾井康子が、言い間違いによる降下指示に気付かず是正しなかったことも、同様に過失行為に当たる。

【因果関係】

 JAL907便の機長がTCASの上昇指示に従わず降下操作を続けたという事情が介在したことは認められるが、管制指示とTCAS指示が相反した場合に関する規定内容などから、機長がTCASの上昇指示に従わなかったことが異常な操作などとはいえない。むしろ機長が降下操作を続けたのは、蜂谷から降下指示を受けたことに大きく影響されたものだ。機長がJAL907便の降下を続けたことは、降下指示とニアミスとの因果関係を否定する事情にはならない。ニアミスは、言い間違いによる降下指示の危険性が現実化したもので、指示とニアミスとの間には因果関係がある。

【予見可能性】

 両被告人は、JAL907便とJAL958便が異常接近しつつある状況を認識していたのだから、言い間違いによる降下指示の危険性も認識できた。TCASに関する両被告人の知識を前提にすれば、JAL958便にTCASの降下指示が出されることは十分予見可能。JAL907便とJAL958便が共に降下を続けて異常接近し、両機の機長が接触、衝突を回避するため急降下を含む何らかの措置を余儀なくされ、乗客らに負傷の結果が生じることも予見できた。

 蜂谷の言い間違いによる降下指示は、事故の発生を未然に防止する航空管制官としての業務上の注意義務違反。籾井が、不適切な管制指示に気付かず是正しなかったことも、指導監督者としての業務上の注意義務違反だ。これら過失の競合によりニアミスを発生させたのであって、両被告人に業務上過失傷害罪が成立する。

 管制官の指示とTCASの指示が相反した場合の優先順位が明確に規定されていなかったこと、航空機の性能についてJAL907便機長に周知されていなかった事情も認められる。しかしそれらの事情は、ニアミスの責任のすべてを両被告人に負わせるのが相当ではないことを意味するにすぎず、業務上過失傷害罪の成否を左右するものではない。

【宮川光治裁判官の補足意見】

 ヒューマンエラーを事故に結び付けないシステムの工夫が不十分だったことは確かだが、管制官としての注意義務を怠った場合は刑法上の過失責任を問われることがあり得る。システム上の問題は、情状としての考慮があり得るにとどまる。

【桜井龍子裁判官の反対意見】

 JAL907便がTCASの上昇指示に反して降下を続けたことは、両被告人にとって予想外の異常事態。両機が異常接近することに予見可能性は認められない。
 JAL907便機長の判断は、本来提供されるべき情報が提供されていなかった結果生じた誤った判断。因果関係の有無を検討する上では、異常な介在事情と評価するのが相当だ。降下指示とニアミスとの因果関係は認められない。降下指示およびこれを是正しなかったことについて、過失責任を問うことはできない。
 管制指示とTCAS指示が相反した場合の優先関係という、最も重要かつ基本的な運用事項が明確に定められていなかったことが、ニアミスに関連することは明らかだ。

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静岡駿河湾上空ニアミス事故(2001/01/31)

<事故の概要>←航空事故調査委員会の調査報告書を基に

 2001/01/31(水)、JAL907便(羽田発那覇行き、B747-400D型、JA8904)は東京羽田空港を離陸し、東京航空交通管制部の上昇指示に従って、高度約37,000フィート付近を上昇飛行中、同管制部からの指示により高度35,000フィートへ降下を開始した。また、JAL958便(韓国釜山発成田行き、ダグラスDC-10-40型、JA8546)は、釜山国際空港を離陸し、飛行計画に従って高度37,000フィートで愛知県知多半島の河和VORTACを通過し、大VORTACへ向けて巡航中であった。

 両機は、2010/01/31 15:55頃、静岡県にある焼津NDBの南約13kmの駿河湾上空約35,500~35,700フィート付近で、異常に接近し、双方が回避操作を行ったが、JAL907便において、回避操作による機体の動揺により、乗客と客室乗務員が負傷した。

 JAL907便には、乗客411名、乗務員16名、計427名が搭乗しており、乗客7名と客室乗務員2名が重傷を負い、乗客81名と客室乗務員10名が軽傷を負った(つまり100名が負傷した)。JAL907便は、機体が動揺した際、機内の一部が小破したが、火災は発生しなかった。
 一方、JAL958便には、乗客237名、乗務員13名、計250名が搭乗していたが、負傷者はなかった。JAL958便には、機体の損傷はなかった。
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無題
この事故に関しては、事故当時、TCASの指示と管制官の指示が相反した場合の対応策が何も決められていなかったのではなく、、航空局は現場の管制官に対し、「TCASの指示と管制官の指示が相反した場合、パイロットが見張り義務により対応するため、管制官は対応する必要はない。」と指導していたにもかかわらず、何故か理由はわかりませんが、その事実を裁判においても、事故調査委員会の報告書においても、誰も一切言及していないことが全てを物語っていると思います。
NONAMEさん / 2011/01/23(Sun) /
Re:無題
>指導
この指導、どこか目に見える場所に載ってませんか?
 (2011/02/01)
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